総評
10月8日のムジカCコンサートは、久しぶりの大倉山記念館でした。 個人的にお気に入りの会場で、久しぶりでもあり、とても楽しみにしていました。
改めて、本当に聴き疲れのしない響きのホールだと思いました。 ドーム型の高い天井と、内装にふんだんに木材を使っているせいでしょう。その木材も貼り物ではなく、贅沢な無垢材を使っていると思います。今時、贅沢な内装なのです。
今回、昼の部は、比較的新しく通われている生徒たちの多いプログラムとなりました。そしてその生徒たちが、いずれも技術的に伸展のある演奏を聞かせてくれました。それは声の安定、ということもありますし、声量が増して来たこともあります。今後は、更に明るい声質と響きが得られるよう、発声をもっともっと研究して更に上手になってください。
一方、長く通ってくれている人たちに伸展がないのではなく、成長段階が違うと理解して下さい。
芯のある声がなぜ必要なのか?母音の声質って何だろう? これらのことは、ホールで良く響く声を得るための、オーディオ的な意味での発声の基礎でもありますし、言葉を歌う、という声楽において最も難しい技術を要するレベルでの、発声の捉え方の問題もあります。
高度なレベルのことですが、せっかく外国語で歌うのですから、少しでも高いところを目指して欲しいと思います。
さらなる皆さんそれぞれの持つ課題の向上を期待しています。 おめでとうございました。
出演者イニシャル NM AS AY TF HA WH KY NS
NM
どの曲も安定した声で、音程と声量共に、このホールで歌曲を聴くのに必要充分な声、と感じられました。
こちらに来た頃にくらべると、声の響きは安定して声量も増した、と思いました。
フォーレのチープで美しいメロディによる歌曲をしみじみと楽しめました。
気になったことは、高音発声時にそのまま喉を押してしまうために、少し締まること。
低音は、まだ軟口蓋が良く上がっていない発声だと思います。そのことが、息漏れ傾向の声につながっていると思います。
本来的にたっぷりした息と良い喉を持っていますので、更に発声を進化させればもっと良くなると思います。
おめでとうございました。
プログラム
モーツアルト 歌曲
「鳥たちは毎年」
フォーレ 歌曲
「この世」
「愛の歌」
「月の光」
「夜想曲」
AS モーツアルトの歌曲を3曲続けましたが、モーツアルトの良さが良く判る演奏になりました。
シンプルで美しい。何かまったく自然なものに囲まれているような、ぎすぎすしたもののない自然な美しさです。
声ですが、喉を締めて頑張らないように、というレッスンの成果は充分出せた演奏だと思います。
一見声量がないように感じますが、きれいな響きがあります。
これからも、喉で力まないで自然に声の響きを立ち上げるように、という発声を大事にしてください。
その方向から身体の脱力や、歌に良い姿勢が生まれて、本当の声量が出せるようになって来ます。
おめでとうございました。
プログラム
モーツァルト 歌曲
「夕べの想い」
「人なき森にて」
「すみれ」
前回より更に声の響きが前に聞こえてくるようになりました。
一部不安定なところもありましたが、暗譜の問題に起因するようなので、声の問題ではないでしょう。
ただ、まだまだ声が中に潜る傾向は残っており、そのために声質がこもりますので、下顎の降ろし方には充分注意して下さい。
降ろし過ぎないことと、下顎が前に出ないように気をつけて下さい。
そして下顎よりも、上あごを上げる方を良く意識して実行される方が良いと思いました。これは特に中低音域での発声のことになります。
音楽的な集中力や、イメージの持ち方などは、なみなみならぬ力を持っていますので、発声を進化させて音楽性を更に伸ばしてください。
おめでとうございました。
プログラム
ブラームス ドイツ・レクイエム より 「あなた方は今は悲しんでいる」
リヒャルト・シュトラウス 8つの歌より 「万霊節」
このところのレッスンで本当に良い方向が見つかっていたので、今回の本番でどこまで出来るか?と思ってました。
リハーサルでは、緊張のせいか?ホールの影響か?成果が出せないようだったので、この時点で指示して簡単に修正しました。
結果ですが、本番は1曲目で良い方向性が内在しているのが良く判る演奏が出せていました。
以前の癖と、新たにつかみかけている発声が、微妙に戦っている感じ、良い方向の落ち着いた良い声も時折聞こえていて期待が持てました。
しかし2曲目から緊張したのか、発声が元に戻ってしまいました。
一気に緊張が増した場合に、どうやって開き直るのか、その方法は?という緊急の対処法も教えておくべきだったか、と少々悔やまれました。
発声の具体的な方法は頭で理解できたが、ホールや違う条件でどう対処するのか?ということになります。
発声の方向は明快に見えているし、理解できていますので、このままの方向で次回につなげて下さい。
おめでとうございました。
プログラム
シューマン 「子供のための歌のアルバム」より 「時は春」
「ミンネの歌」より 「ぼくの美しい星」
フランク 「天使の糧」
この写真の通りに楽しく自在に歌えるパフォーマンスは彼女の素晴らしい持ち味で、今回もそれぞれの曲の違い、表現がステージマナーに顕れていました。その上で、今後はさらに声そのものに表現力をつけてください。そして、それは声を楽器として扱うこと、扱えるような発声を会得すること、と悟ってください。
Sebben crudeleのテンポが、ピアノのテンポがやや速かったと感じました。もう少し落ち着いていれば、素晴らしかった。モーツアルトの「薬屋の歌」は雰囲気が伝わる好演だったと思います。もう少し、声そのものを器楽的に扱えるようになってほしいです。
Ave Mariaは、全体に安定した発声でした。もう少しピアノとの合わせを重ねて、結果的にテンポがゆっくりから始めて、最終的に盛り上がるような演奏になれば、理想的でした。ぜひまた挑戦されてください。
おめでとうございました。
プログラム
イタリア歌曲集より 「たとえつれなくても」
モーツアルト 歌劇 「ドン・ジョバンニ」より
ツェルリーナのアリア 「薬屋の歌」
グノー 「アヴェ・マリア」
ベッリーニOh quante volteは、レシタティーヴォの声、アリアの声ともにリラックスしているせいか声量が良く出ていました。その意味では今回の出演者中、随一と思います。
ただ、歌うに連れ徐々に力みが出て来たようでした。伴奏なしの音程の保持は難しいもので、声量の方向と反比例することがあります。この点は、発声の細かいことを教え切れなかったな、と反省がありました。
2曲目の「ドレッタの夢」はとても良く歌えていましたが、最高音の発声は、やや頑張り過ぎの印象がありました。もう少し力まない歌い方を探せたでしょう。
口は良く開けて良いですが、フレーズの中の高音で、唐突に開けるやり方は注意が必要と思います。フレーズの中でしなやかに準備して落ち着いて高音を発声する、という処理の滑らかさを見つけて下さい。全体に発声の方向性は良いので、更に丁寧に歌うことを目標にされて下さい。
おめでとうございました。
プログラム
ベッリーニ 歌劇「カプレーティとモンテッキ」より ジュリエットのアリア 「おお幾度か」
プッチーニ 歌劇「つばめ」より マクダのアリア 「ドレッタの夢の歌」
今回は屈指の好演だったと思います。童謡が予定外のタイトルを言うせいもあったからか?
少し緊張気味でしたが、それでも良かったです。
何が良かったかというと、声が良かった。非常にバランスのとれた中音域の声になっていました。
そして、それは、日本語の響き、語感とぴたりと合ったものだったということです。
そして、最後に歌ったシューマンの「献呈」では、それが日本語の母音の響きとは全く違う響きに変わっていたことでした。
したがって「献呈」の声は、この音楽に充分相応しい母音の響きを出せていたことが、教えた者としても驚きでした。
この曲も、声のことではあまり詳しく教えた記憶がしませんが、とても良いポイントにはまっていました。
彼女のある種の感性が導き出したことだと思います。
おめでとうございました。
プログラム
山田耕作 「かえろかえろと」
成田為三 「赤い鳥小鳥」
草川 信 「ゆりかごの歌」
シューマン 「献呈」
今回、選曲がシンプルな歌曲で、練習も充分に出来ましたので一般的な心配はまったくありませんでした。
ただ、この数回のレッスンで教えた低音発声のことと母音の響きについて、どれだけ本番で反映されるだろうか?
という好奇心がありました。結果的に、中低音の発声のポジションはうるさく云った甲斐があり、良かったと思います。
ただ、狭母音の発声は、まだ開かないで発声しているケースが多かったのが惜しかったです。
色々な考え方がありますが、私は言葉も歌の中の音楽的要素の成立に大きく関わっていると思います。
その意味で、母音の扱い(子音も含めた)にとことんこだわった演奏がもっと出来るようになってほしい、と思っています。
また、次回は更に上を目指せるはず、と確信出来た演奏になりました。
おめでとうございました。
プログラム
フォーレの歌曲
「夕暮れ」
「揺りかご」
「ある修道院の廃墟にて」